Cosmico
2026年10月12日

牛島総合法律事務所の生成AI活用に学ぶ、法律事務所の実態

約75人の弁護士が所属する牛島総合法律事務所は、生成AIをどう使っているのか。公開インタビューをもとに、活用業務・運用ルール・課題を整理し、小規模事務所が真似できる点を紹介します。

牛島総合法律事務所法律事務所生成AIMicrosoft 365 Copilot弁護士
  • 約75人の弁護士が所属する牛島総合法律事務所は、Microsoft 365 Copilotを軸に生成AIを使っていると紹介されています。
  • 活用先は、英訳、文字起こし、不祥事調査、会議準備、契約書レビュー、送付前チェックなどです。
  • 運用では、データを自社テナント内に収めることと、若手はまず自分で作ってからAIで検証することが挙げられています。
  • 一方で、若手の育成、事務所間の環境格差、収益モデルへの影響が課題として語られています。

情報の基準日:2026年10月12日時点

「他の事務所は、生成AIをどこまで使っているのだろう」。所内で話題に出ても、実際の使い方までは聞こえてこない、という方は多いのではないでしょうか。

この記事では、牛島総合法律事務所の生成AI活用を、公開されているインタビュー記事をもとに整理します。法令や業法の解釈には踏み込まず、「何に使い、どう運用し、何を課題と感じているか」に絞ってお伝えします。

出典は日経BPの特集記事(Microsoft関連の企画記事とみられます)です。1つの事務所の例であり、すべての事務所に当てはまるわけではありません。

牛島総合法律事務所は、生成AIを何に使っているのか

結論:英訳から調査、レビュー、送付前チェックまで、幅広い「作業」に使われています。

牛島総合法律事務所は、約75人の弁護士が所属する法律事務所です。記事では、データ・情報法を専門とする同事務所の弁護士が、Microsoft 365 Copilotを中心に生成AI活用を進めていると紹介されています。

週末に急な英文対応が入って焦った経験、ありませんか。

記事に書かれている主な活用業務は、次のとおりです。

業務 使われ方(記事の記載範囲)
英訳・文法チェック 英訳が「あっという間」にできる。表現の調整にも対応
音声データの整理 文字起こしをして、証言を対象者別・出来事別に整理する
企業の不祥事調査 「1日がかり」の作業が「十数分」になった例が示されている
会議の準備 過去のメール・チャット・資料を横断して探す
契約書の案件レビュー 過去の議事録やメールも参照しながら確認する
成果物のチェック クライアントに送る前に、検討不足や漏れを確認する

ただし、時間の短縮はインタビュー内の例示です。削減時間の合計や利用人数、コストといったデータは記事に載っていません。「1日が十数分に」という数字だけを、他の事務所に当てはめるのは避けましょう。

運用ルールは、驚くほどシンプル

結論:鍵は「データを外に出さない」と「まず自分でやる」の2点です。

記事から読み取れる運用の考え方は、主に2つです。

  1. データは自社のテナント内に収め、外部に出さない。 情報セキュリティの最低条件として語られています。
  2. 若手は、最初からAIに任せない。 まず自分で作成し、そのあとAIで検証します。

2つ目は、AIを「下書き係」ではなく「検証係」に置く発想です。

たとえば、架空の佐藤法律事務所の若手弁護士が、契約書のドラフトを作るとします。自分で書き上げてから、抜けや矛盾がないかをAIに確認してもらいます。

この順番なら、自分で考える力を保ちながら、見落としだけを減らせます。

もっとも、慣れるまでは「自分で書いたほうが早い」と感じる日もあるかもしれません。

なお、利用規程の詳細やAIの誤情報への具体策は、記事に記載がありません。ここは自事務所で決める必要があります。

事務所が抱える3つの課題

結論:効率化の裏側で、育成・格差・収益モデルの3点が問われています。

記事では、良い面だけでなく、課題も率直に語られています。所長が「若手の起案力は落ちないか」と心配する場面も想像できます。

  • 若手の育成: AIに頼りすぎると、経験を積む機会を失い、弁護士としての基礎力が身につかないおそれがある
  • 環境の格差: 過去データを所内で参照できる環境があるかどうかで、事務所間に差が生まれる可能性がある
  • 収益モデル: タイムチャージ型の収益モデルが崩れる可能性があり、弁護士の役割そのものが問い直されている

とくに2つ目は、小規模事務所にとって見逃せません。過去のメールや資料を横断検索できる強みは、データが整理されていてこそ活きるからです。

小規模事務所が真似できること、難しいこと

結論:所内データに頼らない業務から、小さく始めるのが現実的です。

たとえば架空の山田弁護士の事務所なら、出張前の英文メールの確認から始める手もあります。

真似しやすい部分

  • 英訳や文法チェック
  • 音声データの文字起こしと整理
  • 成果物を送る前の「抜け漏れ」確認
  • 「まず自分でやってから、AIで検証する」という順番

横断検索のように、データ環境の整備が前提の活用は、あとから取り組めば十分です。

一般的な解説記事(aipicks)でも、まず汎用AIを2週間ほど試してから専用ツールを検討する順序が勧められています。

導入前に押さえたい守秘義務とハルシネーション

結論:最大のリスクは、守秘義務違反とハルシネーションです。

ハルシネーションとは、生成AIが事実ではない内容を、もっともらしく出力してしまう現象のことです。詳しくは用語集のハルシネーションも参考になります。

入力前に「固有名詞は伏せたかな」と一呼吸おく習慣が、安心につながります。

先ほどのaipicksの解説では、次のような運用が推奨されています。

  1. 業務利用では、法人プランやオプトアウト設定を前提にする
  2. 依頼者の固有情報は、仮名化・一般化してから入力する
  3. 無料の一般向けプランでは、機密情報を扱わない
  4. 判例番号や条文は、必ず原典で照合する
  5. 利用ルールとログ管理を文書にまとめる

判例を調べる場面での具体的な進め方は、弁護士の判例調査に生成AIを使う|時短の流れと原典確認で整理しています。

事務所で試すときの進め方

結論:まず1つの業務で、時間と気づいた点を記録します。

  1. 英訳や文字起こしなど、データに依存しない業務を1つ選ぶ
  2. 使ってよい情報、入力してはいけない情報を、1枚にまとめる
  3. 同じ業務を、AIあり・なしで1回ずつ行い、所要時間を測る
  4. 誤りや違和感を、事務所内で共有する

最初の1週間は、操作に戸惑って普段より時間がかかることもあります。

西新宿を拠点にAI・DX導入支援を行う株式会社Cosmicoにも、士業事務所から「どの業務から試せばよいか」というご相談が届きます。進め方を整理したいときは、AI戦略コンサルティングも選択肢の一つです。

まとめ

牛島総合法律事務所では、Microsoft 365 Copilotを軸に、英訳、文字起こし、調査、レビュー、送付前チェックなど幅広い作業で生成AIが使われていると紹介されています。

運用面では、データを外に出さないことと、若手はまず自分で作ってAIで検証することが印象的でした。一方で、育成・環境格差・収益モデルという課題も語られています。

他の事務所の例は、自事務所に合う部分だけを借りるのがおすすめです。

なお、弁護士業務の範囲や法的判断に関わる事項は、弁護士等の専門家の領域です。最終判断は弁護士等の専門家へご確認ください。

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