Cosmico
2026年8月29日

海外の税理士事務所の生成AI活用事例|Big4と中小の実例

EY・Deloitte・KPMGなど海外大手から、米国の中小税理士事務所まで。生成AI活用の実例と海外調査データをあわせて整理し、日本の税理士事務所が参考にできる点と注意点を両面から解説します。

海外の税理士事務所生成AI海外事例AI活用実態
  • 海外の税理士事務所では、Big4クラスの大手から中小事務所まで、生成AI活用が調査データ上でも急速に広がっています。
  • EY・Deloitte・KPMGは税務リサーチや財務分析にAIエージェントを組み込み、RSMなど中堅事務所は税務書類の自動処理を進めています。
  • 米国の中小税理士事務所では、ChatGPTやClaudeを使った顧客対応・資料作成の工夫が実名事例として報告されています。
  • 一方で、AI投資の効果を測定できている海外の事務所はごく一部にとどまり、「導入して終わり」にしない工夫が課題です。
  • 制度が異なる日本の税理士事務所が海外事例から学べる着眼点と、注意すべき違いを整理します。

情報の基準日:2026年8月29日時点

「海外の会計事務所はAIをどんどん使っていると聞くけれど、うちには関係ない話では」——月末の記帳チェックと申告期限に追われながら、そう感じる税理士の先生も多いのではないでしょうか。この記事では、海外の税理士・会計事務所の生成AI活用事例を規模別に整理し、調査データの裏付けとあわせて紹介します。

海外の税理士事務所で生成AI活用はどこまで進んでいるか

生成AIとは、文章や要約を自動生成する人工知能の総称で、近年は判断や作業を自律的に実行する「AIエージェント」への発展が進んでいます(用語集:AIエージェントとはも参照)。

この活用は調査データにも表れています。Wolters Kluwerの調査(2025年10月8日発表、世界2,700人超対象)では、AI活用率が2024年の9%から2025年には41%へ急伸しました。Thomson Reutersの2026年調査でも、AI利用率は2025年の22%から2026年には40%とほぼ倍増し、公開ツールを使う専門家も過半数に達しました。都内の税理士・中村さん(仮名)はこの数字に半信半疑だったそうですが、調査対象の広さを考えると一部の動きとは言い切れなさそうです。

Big4クラスの海外会計事務所は生成AIを何に使っているか

大手会計事務所(Big4など)は、税務業務にAIエージェントを組み込む取り組みを進めています。

  • EY:2025年11月25日、税務向け新機能群「EY.ai Tax Labs」「EY.ai Tax Agent Factory」を発表。エージェンティックAIを税務システムに組み込み、コンプライアンスや分析で専門家と並走します。
  • Deloitte:2026年3月18日、自律型AI「Zora AI」を発表。自社の経費管理でコスト25%削減・生産性40%向上を目指し、クライアント企業も財務分析に採用し始めています。
  • KPMG UK:2024年2月22日、Blue J社との提携拡大で税務リサーチAI「Ask Blue J」を導入。就労形態の税務区分判定などを90%以上の精度で予測する技術を、税務・法務スタッフ約3,000人が利用します。

共通するのは、AIに「最終判断」までさせず、業務を高速化する補助として位置づけている点です。ある税理士法人の勉強会でBig4の事例を紹介すると「縁がない話」との声も出たそうですが、着眼点自体は「リサーチ・分析を早める」というシンプルなものです。

中堅・中小の海外税理士事務所の生成AI活用事例

生成AI活用は大手だけの話ではありません。米国の中堅会計事務所RSM USは2024年11月13日、Additive社との提携で、パートナーシップ関連の税務書類から構造化データを抽出し数分でワークペーパーを自動生成する仕組みを統合したと発表しました。

さらに小規模事務所の実例もあります。Journal of Accountancy(2026年8月1日付)によれば、従業員6〜8名規模のCPA事務所がChatGPTやClaudeで税務対応資料や見込み客対応フォームの構築に取り組み、専任担当者がいなくても改善から始められます。もっとも最初は順調ではなく、ある事務所はAIの下書きをそのまま顧客に送りそうになり、数字の誤りに気づいて修正した、というふりかえりも紹介されています。

海外事例から日本の税理士事務所が参考にできるポイント

規模を問わず共通しているのは、AIを「定型書類の下処理」「リサーチの一次案作成」「顧客対応フォームの構築」など、間違っても人がすぐ気づいて直せる業務から使い始めている点です。税務判断をAIに委ねず、周辺業務を任せる役割分担は、税理士事務所のAI活用事例2026で紹介した国内事例とも重なります。毎月末、取引データを目視で仕訳する担当者が「この作業さえ減れば」とこぼす声もよく聞かれます。

Cosmicoでは税理士事務所向けに、取引データを機械学習で自動仕分けするシステムを開発した実績があります(税理士事務所向け取引仕分け自動化事例)。「定型作業をAIに任せ判断に集中する」という設計思想は、海外大手とも方向性が近いと感じます。

導入のハードルと、海外事例をそのまま真似できない点

ここまで良い話が中心でしたが、海外事例をそのまま日本に持ち込めるわけではありません。米国と日本では会計基準・税制・業法が異なり、税理士法52条により税理士業務は有資格者の独占業務とされるため、AIの出力は下書き・整理の補助にとどめ、最終判断は税理士自身が行う必要があります。海外記事を読み「Ask Blue Jのようなツールを」と意気込んでも、日本語対応の同等サービスは少なく、準備に想定以上の時間がかかる場合もあります。

もう一つの注意点は、導入した「その先」です。同調査では、効果を測定できている組織はわずか18%にとどまり、顧客満足度や収益への効果まで検証できている組織はほとんどないと報告されています。「導入した」ことと「効果を検証できている」ことは別問題であり、複雑な税務判断はAIの要約に頼らず税理士自身が一次情報にあたるべき点は変わりません。

まとめ

海外の税理士・会計事務所では、Big4から中小事務所まで、生成AIを「定型業務の補助」として組み込む動きが調査データでも裏付けられています。一方で、効果を検証できている事務所はごく一部という課題も見えてきました。冒頭の中村さんのように「縁がない」と感じていた事務所でも、取り入れられる着眼点はあるはずです。参考にする際は、制度の違いを踏まえて「どこまでAIに任せるか」の線引きを自事務所で設計する必要があります。なお、税務・会計に関する最終的な判断は、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

株式会社Cosmico(東京都西新宿、AI/DXコンサルティング)は、税理士事務所をはじめ士業事務所の生成AI活用を、業務設計から自動化システム開発まで支援しています。

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