司法書士事務所の生成AI活用|議事録・解決事例作成の効率化
司法書士事務所で、議事録の要約やWEBコラム・解決事例の下書きに生成AIを使う動きが広がっています。活用できる領域と、注意すべき確認ポイントを整理して解説します。
- 司法書士事務所向けに、議事録要約・解決事例の紹介文・WEBコラムの下書きを生成AIで効率化する事例が紹介されています(船井総合研究所、確認日2026年9月29日)。
- 対象になっているのは、登記申請そのものではなく「事務所の情報発信」と「社内記録」という、これまでAI活用の話題になりにくかった業務です。
- 議事録要約は、会社法上の決議要件チェックなど司法書士自身の確認工程とセットで運用するのが実務上の前提になっています。
- 解決事例やコラムの下書きも、ゼロから書く負担を減らす「たたき台作成」としての位置づけが中心です。
- 個人情報の取り扱いと、業務の定型度によって向き不向きがある点を踏まえた導入が現実的です。
情報の基準日:2026年9月29日時点
登記や相続の相談対応に加えて、事務所のホームページ更新や打ち合わせの議事録作成まで、手が回らないと感じている司法書士の方は多いのではないでしょうか。
そうした「登記業務そのものではないけれど、確実に時間を取られる仕事」に、生成AIを使う事務所が出てきています。
司法書士事務所の生成AI活用で、いま注目されているのは「情報発信」と「議事録」
船井総合研究所が司法書士事務所向けに公開した資料「1/6の効率化に成功!? 生成AI活用事例大公開」では、WEBコラム作成・解決事例の作成・議事録作成という3つの業務を生成AIで効率化した事例が紹介されています(確認日:2026年9月29日)。
この資料のタイトルでは「1/6の効率化」という数値が掲げられていますが、対象事務所名や内訳の詳細はダウンロード資料側の記載であり、ランディングページ上では開示されていません。
同社は2025年にも「司法書士業界向け生成AI活用実践レポート」を公開しており、業界内でこのテーマへの関心が続いていることがうかがえます。
これまで司法書士業務での生成AI活用というと、登記申請書のドラフト作成や相続関係説明図の素案づくりが中心的な話題でした。
今回のように「事務所の対外的な情報発信」や「社内の記録業務」にまで話題が広がっているのは、比較的新しい動きだといえます。
背景には、相続登記の義務化以降、依頼者が事務所をインターネットで検索してから相談先を選ぶ流れが強まっていることもあります。
ホームページのコラムや解決事例の紹介文は、事務所の専門性を伝える手段として重要度が増していますが、更新にかける人手は限られています。
議事録についても同様で、打ち合わせのたびに一から文章を整えていては、本来の相談業務にあてる時間が圧迫されてしまいます。
架空の例ですが、「ホームページが3年近く更新できていない」と話す司法書士法人◯◯事務所の受付担当者もいるそうで、情報発信の遅れは事務所規模を問わない悩みのようです。
生成AIで下書きを作れる3つの業務
具体的にどんな業務で「たたき台」を作れるのか、整理すると次の3つになります。
- 議事録の要約:会議や打ち合わせの録音・メモをもとに、AIが議事録の文案を作成する。
- 解決事例の紹介文:過去に対応した案件の概要を、事務所ホームページに載せる紹介文の形にまとめる。
- WEBコラムの下書き:相続登記や不動産名義変更など、事務所が発信したいテーマのコラム構成・本文案を作る。
これらに共通するのは、「ゼロから文章を書き始める負担を減らす」という位置づけであって、AIの出力をそのまま公開・使用するものではないという点です。
議事録の要約であれば、担当者が話し合いの流れをメモした簡単な箇条書きをAIに渡すだけで、体裁の整った文案が返ってくるイメージです。
そこから、決議事項の表現や出席者の記載など、司法書士としてチェックすべき部分に絞って手直しをすれば作業が完結します。
もっとも、使い始めのころはメモが簡潔すぎて決議事項が抜け落ちた文案になり、手直しに手間取ったという声もあります。
解決事例の紹介文も、案件の概要と結果だけをAIに渡し、読みやすい構成に組み立て直してもらうという使い方が考えられます。
司法書士のAI活用を扱う別の解説記事でも、「議事録要約」など限られた業務から試し、削減時間をログで可視化する進め方が勧められていました。
導入のハードルと、必ず必要になる確認作業
生成AIの活用にはメリットがある一方で、司法書士業務ならではの注意点もあります。
議事録要約の場合、AIが作った文案をそのまま使うことはできません。 定足数を満たしているか、特別決議が必要な議案で決議要件どおりに記載されているか、出席者の記名押印欄に不備がないかを、司法書士自身が確認する工程が必須です。
架空の例ですが、特別決議が必要な議案なのに普通決議の体裁で文案ができていて、確認の段階で気づいたというケースもあるそうで、この工程を省くことの怖さがうかがえます。
解決事例やコラムの下書きについても、内容の正確性は書き手の責任で担保する必要があります。 事案の個別性が高い場合、AIが作った文章がその事務所の実際の対応と微妙にずれてしまうこともあるため、公開前の照らし合わせは欠かせません。
また、依頼者の氏名・住所・案件の詳細といった個人情報を、そのまま一般公開のAIサービスに入力するのは避けるべきとされています。
固有名詞をマスキングしてから入力する、学習に使われない法人向けプランを選ぶといった運用ルールを、事務所内であらかじめ決めておくことが前提になります。
案件ごとの個別事情が複雑でテンプレート化しづらい業務が中心の事務所では、効果を実感しにくい場合もあります。
生成AIとは、大量のテキストデータから学習し、指示(プロンプト)に応じて文章や要約を生成する人工知能の仕組みのことです(詳しくは用語集:生成AIとはを参照)。
AIは学習データの傾向をもとに「もっともらしい」文章を作るため、事実と異なる内容を自然な文体で出力してしまう「ハルシネーション」と呼ばれる誤りも起こり得ます(用語集:ハルシネーションとは)。
登記業務での生成AI活用については、司法書士事務所の生成AI活用|登記業務効率化と注意点2026でも、地番と住所の混同など細部の誤りやすさを取り上げています。
議事録や紹介文の作成でも同様に、AIの出力を鵜呑みにせず、必ず司法書士自身が最終確認する姿勢が求められます。
小さく始めて、事務所に合うかどうかを見極める
架空の例ですが、司法書士法人〇〇事務所の山田太郎氏(架空の人物)のような事務所であれば、まずは月1回の定例会議の議事録要約からAI活用を試してみる、という始め方が考えられます。
実際に削減できた時間をログで記録しておけば、次にコラムや解決事例の作成にも広げるかどうかを、事務所として判断しやすくなります。
こうした文書作成・データ整理の効率化は、司法書士業務に限らず幅広い業種に共通する課題です。
株式会社Cosmico(東京都西新宿、AI/DXコンサルティング)も、文書作成の効率化を支援してきました(財務レポート自動化の事例)。
生成AIの活用は、業務全体を一気に置き換えるものではなく、負担の大きい一部の文章作成業務から少しずつ取り入れていくものだと捉えると、無理なく検討を進めやすくなります。
なお、本記事で紹介した内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事務所運営や法的な最終判断については司法書士等の専門家にご確認ください。