Cosmico
2026年10月11日

税理士事務所のAI電話|確定申告期の電話対応を回す工夫

確定申告期の電話対応にAI電話を使う税理士事務所の公開事例と、国税庁の時間外AI案内をもとに、運用の工夫・戸惑いへの対応・向いていないケースまで出典付きで整理します。

税理士事務所AI電話確定申告電話対応生成AI

税理士事務所のAI電話|確定申告期の電話対応を回す工夫

  • 確定申告期は電話が鳴るたびに作業が止まりやすく、AI電話で一次受けを任せる税理士事務所が出てきています。
  • 国税庁も、確定申告電話相談センターの時間外にAI電話の自動案内を使っています(2026年1月5日〜3月16日)。
  • 公開事例では、通話内容をテキストでチャットに共有する運用が、折り返しの手間を減らす鍵として紹介されています。
  • ただし数値は導入事務所やベンダーの自己申告です。個別の税務判断は人が受けるという線引きが前提になります。

情報の基準日:2026年10月11日時点

2〜3月の確定申告期は、申告書の作成に集中したいのに、電話が鳴るたびに手が止まる季節ではないでしょうか。

この記事では、AI電話で電話の一次受けを回している税理士事務所の公開事例と、国税庁の取り組みをもとに、運用の工夫と注意点を整理します。

なお、事例はベンダー公開のものが中心です。数値は割り引いてお読みください。

AI電話とは?税理士事務所での使いどころ

AI電話とは、かかってきた電話にAIが応答し、用件を聞き取って内容を記録・共有する仕組みのことです。

税理士事務所での使いどころは、打ち合わせ中の一次受け、営業電話の選別、用件を把握してからの折り返しです。税務の判断までAIにさせる事例は、今回は見当たりませんでした。

国税庁も時間外にAI電話を使っている

身近な先行例として、国税庁が確定申告電話相談センターの時間外にAI電話の自動案内を使っています。

2026年1月5日の発表によると、株式会社TACTの「AIコンシェルジュ」が、全国524の税務署の確定申告電話相談センターに提供されています。

  • 有人対応は平日8:30〜17:00のみで、時間外(平日17:00以降と土日祝)はAIが案内する
  • 対象は、申告方法など一般的な相談
  • 実施期間は2026年1月5日〜3月16日

ただし、これは税務署の窓口の話で、税理士事務所が直接使える仕組みではありません。

たとえば夜8時に、仕事帰りの人が申告方法を確かめたくなっても、一般的な案内なら時間外に受けられる、というイメージです。

国税庁の案内ページでも、回答は一般的な説明で、申告内容の判断や責任は利用者本人が負うとされています。一般的な案内はAI、判断が要るものは人という切り分けと読み取れます。

税理士事務所2件の導入事例

税理士事務所の公開事例として、ベンダー(ミライAI)のサイトに掲載された2件を見てみます。

効果の数字は、いずれも事務所の自己申告です。

仙台市の税理士法人(従業員15名)

打ち合わせ中や移動中に電話に出られず、スタッフが一次受けして担当者が折り返す運用が二度手間になっていたそうです。

導入後は、1日の通話時間が約30分から5〜10分程度に減ったと紹介されています。

運用の工夫としては、次のような点が挙げられています。

  • 通話内容をテキスト化し、チャットで全員に共有する
  • 朝礼の司会者が、その日のAI電話の担当を兼ねる
  • 顧客には、Web掲示板でのテキストのやり取りへ移ってもらう

秩父市の税理士事務所(従業員7名)

確定申告期など繁忙期に代表電話が集中し、鳴るたびに作業が中断していたそうです。1日5〜10件の電話のうち、1〜2件は営業電話だったと紹介されています。

導入後は、電話対応時間が「大きく減った」とされています(削減後の具体的な時間は記載なし)。

工夫の例は次のとおりです。

  • 受電内容をチャットにリアルタイムで連携する
  • 曜日ごとに、チャットの確認担当を決める
  • 代表者への相談は、業務の区切りでまとめて折り返す

この事務所は、新規の約8割が紹介経由のため、営業電話を減らしても集客への影響は小さいと判断したそうです。これは同事務所の事情で、一般化はできません。

運用を回す4つのコツ

2件に共通していたのは、受けた後の運用を決めていることでした。

  1. 共有の仕組み:通話内容をテキスト化し、チャットで全員に共有する
  2. 担当の決め方:曜日や朝礼当番ごとに確認担当を決める
  3. 対応漏れの防止:未対応の着信の定期確認や、タスク化を行う
  4. 顧客への案内:要件を残せば折り返す旨を丁寧に伝える

特に大切なのは「誰がいつチャットを見るか」を決めておくことではないでしょうか。

たとえば当番が決まっていないと、チャットが誰にも見られないまま夕方になり、折り返しが翌日に持ち越されます。

導入のハードルと向いていないケース

どちらの事例でも、導入当初は顧客の戸惑いがあったと紹介されています。

  • 「急ぎのときはどうするのか」と心配する顧客がいた
  • 「電話がAIになること」への抵抗感があった

ベンダー解説でも、専門用語への対応不足や応答の不自然さが失敗例として挙げられています。

たとえば架空の鈴木 花子さんは、AIの声に「本当に伝わるの?」と不安になり、結局もう一度かけ直すかもしれません。

導入直後は、AIが聞き取った社名の漢字が違い、確認の電話を入れ直す手間が出ることも想定されます。

次のような事務所では、慎重に検討したほうがよさそうです。

  • 自事務所の電話の内容を把握していない
  • AIと人の切り分けルールを決められない
  • 顧問先に高齢の方が多く、電話以外への移行が難しい

また、通話内容の保存や個人情報の取り扱いは、導入前に必ず確認してください。

小さく始める3ステップ

架空の「山田税理士事務所」を例に、始め方の一例を挙げます。

  1. 電話の中身を数える:1週間、「営業・定型の確認・個別の相談」に分けて記録する
  2. 任せる範囲を決める:まず時間外や営業電話の選別だけをAIに任せる
  3. 当番を決める:チャットを見る当番と、折り返しの期限を決める

たとえば1週間記録すると、定型の確認が意外と多いと気づくかもしれません。

数週間試して、対応漏れや顧問先の戸惑いがないかを振り返ってから広げましょう。

株式会社Cosmicoでも、士業事務所から「どの業務から試せばよいか」というご相談をいただきます。整理したい場合は、AI戦略コンサルティングも選択肢の一つです。

あわせて、他の税理士事務所の活用実態は税理士事務所のAI活用事例、自前でツールを作る例はAI-OCRと税務Q&Aボットの自作事例で紹介しています。

まとめ

確定申告期の電話対応に、AI電話の一次受けを使う税理士事務所が出てきています。国税庁も時間外の案内に使っています。

一方で、効果の数値は自己申告で、導入当初は顧客の戸惑いもありました。聞き取りと取り次ぎはAI、個別の判断は人という線引きが前提です。

まずは電話の内容を数えるところから、始めてみてはいかがでしょうか。

なお、税務相談や税務書類の作成は税理士法に関わる専門領域です。最終判断は税理士等の専門家へご確認ください。

出典・確認日

AI導入についてご相談ください

まずはお気軽にお問い合わせください。

無料相談を予約する