会計事務所の生成AI利用率81%|公開調査の数字と読み方
会計事務所で働く743人への調査で、生成AIの導入は81%と公表されました。活用目的やツール、運用ルールの数字を整理し、誰に聞いた数字なのか、自事務所への当てはめ方まで解説します。
- **会計事務所で働く743人への調査で、生成AIを導入している勤務先は合計81%**と公表されています。
- 活用目的の上位は、リサーチ・資料作成、文字起こし・議事録、データ入力・仕訳です。
- ただし、回答者は個人で、調査主体は転職支援会社です。母数が曖昧な数字もあります。
- 数字は傾向をつかむ材料にとどめ、自事務所で小さく試して確かめるのが安心です。
情報の基準日:2026年10月25日時点
「よその会計事務所は、もうAIを使っているの?」と、所内で話題になることはありませんか。忙しい日々の中で、周りの状況は見えにくいものですよね。
この記事では、2026年10月に公表された調査の数字を整理し、読むときの注意点まで丁寧にお伝えします。法令や税務の解釈には踏み込みません。
出典は、転職支援会社の公表ページです。当社が調べたものではなく、公開情報の整理である点をご了承ください。
調査の概要|誰に、いつ聞いた数字か
結論:会計事務所で働く743人へのアンケートで、公表日は2026年10月12日です。
まず、調査の概要を表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査主体 | 会計・税務人材の転職支援会社 |
| 実施 | リサーチ会社(回答者はリサーチパネルから抽出) |
| 調査期間 | 2026年9月3日〜9月7日 |
| 対象 | 全国の、現在会計事務所で働く人 |
| 有効回答 | 743 |
| 方法 | アンケートリサーチ |
ここで大切なのは、数えたのは会計事務所ではなく、働く個人の回答という点です。
そのため、この記事では「会計事務所の81%」ではなく「回答者の勤務先の81%」と書きます。
数字で見る結果|導入、目的、ツール
結論:導入は81%で、目的の上位はリサーチ・資料作成でした。
公表されている主な数字は、次のとおりです。
- 導入状況:業務の「大部分」または「一部」で導入している勤務先が合計81%(内訳は記載なし)
- 活用目的(上位):リサーチ・資料作成55%、文字起こし・議事録作成49%、データ入力・仕訳42%
- 有料ツール(上位):ChatGPT 64%、Gemini 41%、Copilot 36%
- AI関連サービス:有償で提供している勤務先が40%、サービスの一環として提案している勤務先が55%
運用面の数字もあります。8割超が運用ポリシーやルールを導入し、対策はリスク研修43%、マニュアル整備36%、利用ツールの制限33%でした。
また、70%以上が社内外の講師による教育研修を行っているとされています。
なお、割合の合計が100%を超えるため、複数回答の設問と推測されます(原典に明記はありません)。
収入・残業への影響をどう読むか
結論:好影響の報告はあるものの、母数が曖昧で、鵜呑みにはできません。
公表ページには、次の内訳が載っています。
- 残業が減った:31%
- 収入が増えて残業が減った:23%
- 収入が増えた:13%
合計は67%で、ページでは「約3分の2」と紹介されています。
ところが、見出しでは「導入事務所の約3分の2」、本文では「全体の約3分の2」と書かれ、どちらが母数か読み取れません。
採用への影響の項目も、選択肢の記載に重複があり、数字を正確に読み取れませんでした。そのため、本記事では採用の数字は扱いません。
この調査を読むときの4つの注意点
結論:個人回答、調査主体の立場、母数、未掲載の項目の4点に気をつけます。
ここからは筆者の整理です。
- 個人の回答であること:会計事務所の代表の意見ではなく、働く人が答えた内容です
- 調査主体の立場:転職支援が本業で、採用に関わるテーマは同社の事業と関連しうる点を意識します
- 母数が曖昧な数字があること:前の章の「約3分の2」が一例です
- 書かれていない項目があること:導入していない理由や、つまずきは掲載がありません
良い数字だけでなく、語られていない部分にも目を向けると、冷静に判断できます。
導入のハードルについては、税理士事務所のAI自作(OCR・QAボット)の記事も参考になります。
自事務所に当てはめる3ステップ
結論:現状の把握、ルール決め、小さく試す、の順に進めると無理がありません。
たとえば、架空の山田会計事務所(スタッフ5名)で、所長が調査の記事を読んだ場面を想像してみます。
「81%なら、うちも遅れているのでは」と焦る気持ちは自然です。ただ、数字を見て焦るより、まず自分たちの状況を見ます。
月曜の朝礼で「最近、AIを使っている人はいますか」と尋ねたところ、若手スタッフが「議事録の整理に、個人のアカウントで試していました」と手を挙げた、という想像です。
こうして、所内の使い方が少しずつ見えてきます。
- 現状を書き出す:時間がかかっている作業と、すでに誰かが使っているAIを洗い出します
- ルールを決める:入力してよい情報と、伏せ字にする情報を分けます
- 小さく試す:顧客情報を含まない作業から始め、かかった時間と確認の手間を記録します
ただ、実際に試すと、入力してよい情報の線引きで手が止まることもあります。
出力の確認に思ったより手間がかかり、戸惑う場面もありそうです。確認役が限られる小規模な会計事務所ほど、無理のない範囲で進めたいところです。
クラウド会計サービス提供会社の解説(2026年1月公開)では、メール文面の作成、面談メモの整理、文章校正などから始める進め方が紹介されています。
また、無料版では入力データが学習に使われるおそれがあるため、顧客の固有情報は入力しない、伏せ字にする、といった注意も挙げられています。
税理士の寄稿(2026年3月公開)では、医療費控除の明細書づくりにAIを使う例が紹介されています。一方で、対象外の支出の判定や制度適用の可否は、税理士が判断するとされています。
確定申告期の活用は、税理士事務所のAI電話と確定申告の記事でも整理しています。
もちろん、AIの出力にはもっともらしい誤りが含まれることもあります(用語はハルシネーションの解説が参考になります)。最終判断は税理士等の専門家へご確認ください。
AI活用の進め方でお悩みの方へ
結論:何から手を付けるか迷うときは、外部に整理を頼む選択肢もあります。
なお、上記で紹介した調査や事例は当社の支援先・実績ではありません。
西新宿を拠点にAI・DX導入支援を行う株式会社Cosmicoには、士業事務所から「どの業務から試せばよいか」というご相談が届きます。
整理から始めたい場合は、AI戦略コンサルティングや生成AI活用の研修も選択肢の一つです。用語は生成AIの解説をご覧ください。
まとめ
公開された調査では、回答者の勤務先の81%が生成AIを導入し、目的の上位はリサーチ・資料作成などとされています。
ただし、回答は個人によるもので、母数が曖昧な数字もあります。数字は傾向をつかむ材料として読みましょう。
まずは自分の会計事務所の作業を書き出し、ルールを決めて、小さく試してみてはいかがでしょうか。
出典・確認日
- 会計事務所の生成AI活用に関する調査(転職支援会社の公表ページ、2026年10月12日公開)(確認日:2026年10月25日)
- AI時代の税理士事務所経営(税理士による寄稿、2026年3月19日公開)(確認日:2026年10月25日)
- 税理士事務所の生成AI活用の解説(クラウド会計サービス提供会社、2026年1月28日公開)(確認日:2026年10月25日)